ソウルの観光スポットの中でも景福宮(キョンボックン)、昌徳宮(チャンドックン)、昌慶宮(チャンギョングン)、徳寿宮(トクスグン)の4大宮と宗廟(チョンミョ)は特に外国人観光客に人気があります。500年以上の長い歴史があり、韓国的な美しさが感じられるからです。宮殿の基本的な構造はどれも似ていますが、それぞれに異なった魅力があります。4大宮と宗廟をめぐって朝鮮時代の息吹を感じながら、長い歴史に思いを馳せてみませんか?

 

 

宮殿の基本情報
宮殿がいくつも建てられた理由は、建物の修理や国家的な災難、または政治的な理由などによって公式の宮殿が使えなくなった場合、予備の宮殿が必要だったからです。そのためソウルにいくつも宮殿が建てられ、その中で公式の宮殿を「法宮」、次によく使われる宮殿を「離宮」と呼びました。すべての宮殿は内殿と外殿に分けられ、内殿は王や王妃、王室の家族が生活する私的な空間として使われました。また外殿は王が臣下と政務を執ったり国家行事を催したりするために使われました。外殿は宮殿のメインの建物である正殿を始め、王の個人の事務所である便殿、臣下が業務を行う建物などで構成されています。この他に王や王室の家族が休息をとることができるよう、池や亭子(あずまや) を配した後苑(フウォン)もあります。

 

 

品階石(プムゲソク)について

 

朝鮮時代は官職の階級が18等級に分かれており、その等級を石に刻んで宮殿の正殿前の庭に順に並べたのが品階石です。国家行事ですべての臣下が集まるとき、各臣下は自分の等級の品階石の前に立ちました。正殿に向かって右側が文官、左側が武官となっています。

 

丹青(タンチョン)について

丹青とは木造建築物に青、赤、黄、白、黒の5色を基本として様々な模様や絵を描いたものです。雨風や害虫などから建物を守る効果があり、主に宮殿や寺院の建物に丹青が施されています。絵の内容や模様は建物により異なり、丹青には火災や邪気を退ける象徴的な意味が込められています。

 

 

 

朝鮮の法宮、景福宮(キョンボックン)

 

朝鮮の宮殿の中で最初に建てられた景福宮は朝鮮を象徴する法宮です。1395年に完成した景福宮は壬辰倭乱(文禄・慶長の役)のときに焼失し、その後約270年間放置されていましたが、朝鮮時代末期の1867年に王室の威厳を高めるために再建されました。その後日帝強占期に建物のほとんどが壊されましたが、1990年から段階的に復元作業が進められています。景福宮の正門である光化門(クァンファムン)は2010年に本来の場所に移されました。

 

 

 光化門の中に入ると、現存する韓国最大の木造建築であり、景福宮の中心である勤政殿(クンジョンジョン)があります。勤政殿は歴代の王の即位式や重要な公式行事に使用された建物で、王の権威を象徴するような荘厳な姿が印象的です。勤政殿の裏には王が起居した宮殿である思政殿(サジョンジョン)と王の寝室であった康寧殿(カンニョンジョン)、王妃が生活していた交泰殿(キョテジョン)があります。

 

 

 勤政殿に向かって左には宴会場として使用されていた慶会楼(キョンフェル)があります。人工池の上に建てられた2階建ての楼閣で、景福宮の美しい建築物のひとつです。慶会楼特別観覧に申し込めば慶会楼の中から周りの景色を見ることができます。
※慶会楼特別観覧は電話で要予約(外国人専用番号:+82-2-3700-3904)。観覧時間約40分。

☞ 周辺観光地:国立古宮博物館、国立民俗博物館
住所:ソウル特別市 鍾路区 社稷路 161
運営時間:3月~5月、9月~10月は9:00~18:00/6月~8月は9:00~18:30/11月~2月は9:00~17:00(火曜日休業)
入場料:大人3,000ウォン(韓服着用の方および毎月最終水曜日は入場料無料)
アクセス:ソウル地下鉄3号線「景福宮(キョンボックン)駅」5番出口より直結
ホームページ:http://www.royalpalace.go.kr:8080/(韓・英)

 

 

自然と調和を成す昌徳宮(チャンドックン)

 

昌徳宮は1405年に朝鮮の第3代国王である太宗(テジョン)が景福宮の東側に離宮として建てた宮殿です。昌徳宮の大きな特徴は自然を利用した空間配置です。朝鮮の王たちは景福宮より昌徳宮で過ごすこと好んだといわれており、朝鮮の宮殿の中でもっとも長い間王が住んでいました。昌徳宮はソウルの4大宮のうち原形がもっともよく保存されているところで、1997年にユネスコ世界遺産に登録されました。

 

 

 

 

 仁政殿内部(写真左)、楽善斎

宮殿の東側の端にある楽善斎(ナクソンジェ)という素朴な建物は、朝鮮の第24代国王である憲宗(ホンジョン)が後宮(王の側室)のために用意した空間です。またここは朝鮮の最後の皇女である徳恵翁主(トクヘオンジュ)が住んでいたところです。

 

 

 

 

 

 山と丘に囲まれた昌徳宮の後苑(フウォン)は、朝鮮の宮廷の後苑の中でもっとも広く景色が美しいところです。後苑にある建物は自然と調和しており、王はこの後苑で臣下と談笑したり、科挙の試験を行ったりしたといわれています。後苑には他の宮殿に比べて素朴な建物である演慶堂(ヨンギョンダン)があります。この建物は朝鮮時代の貴族階級の家を模倣して建てられたもので、王や王妃が客を迎える場所として利用されました。

昌徳宮の仁政殿(インジョンジョン)、楽善斎などの宮殿は自由に観覧できますが、後苑は予約をし、文化財解説士と一緒にめぐります。後苑の観覧はインターネットで予約するか、現地に行って直接予約します。時間ごとに韓国語・英語・日本語・中国語のいずれかで解説が行われます。

また昌徳宮では毎年春と秋に夜間ツアー「昌徳宮月明かり紀行」が行われています。解説士と一緒にめぐりながら昌徳宮の歴史や文化について学び、伝統芸術公演を鑑賞します。

☞ 関連ページ:昌徳宮月明かり紀行、ユネスコ世界文化遺産「昌徳宮」
住所:ソウル特別市 鍾路区 栗谷路 99
運営時間:2月~5月、9月・10月は9:00~18:00/6月~8月は9:00~18:30/11月~1月は9:00~17:30(月曜日休業)
入場料:大人3,000ウォン(韓服着用の方および毎月最終水曜日は入場料無料)
※後苑観覧料金:大人5,000ウォン(昌徳宮の入場料は別途)
アクセス:ソウル地下鉄3号線「安国(アングク)駅」3番出口より約500m
ホームページ:http://www.cdg.go.kr/(韓・英)

 

 

孝行心が生んだ昌慶宮(チャンギョングン)

昌慶宮の正殿、明政殿(ミョンジョンジョン)

昌慶宮は朝鮮の第9代国王である成宗(ソンジョン)のときに建てられたもので、王の母、祖母などが過ごせるように昌徳宮近くに建てられました。全体的にこじんまりとしており、政治の空間より生活の空間の方を広くとってあります。政治に関する話よりも、王の孝行心や愛、王と世子の愛憎、王妃と後宮との葛藤など、王室の家族史に関する話が多く伝えられています。
住所:ソウル特別市 鍾路区 昌慶宮路 185
運営時間:2月~5月、9月・10月は9:00~18:00/6月~8月は9:00~18:30/11月~1月は9:00~17:30(月曜日休業)
入場料:大人1,000ウォン(韓服着用の方および毎月最終水曜日は入場料無料)
アクセス:ソウル地下鉄4号線「恵化(へファ)駅」4番出口より約800m
ホームページ:http://cgg.cha.go.kr/ (韓国語)

 

 

伝統と近代の融合、徳寿宮(トクスグン)

 徳寿宮の正殿、中和殿(チュンファジョン)

 朝鮮時代に2度ほど宮殿として使用されたことのある徳寿宮は、本来「慶運宮(キョンウングン)」と呼ばれました。慶運宮が最初に宮殿として使われたのは壬辰倭乱後、第14代国王である宣祖(ソンジョ)がここを臨時の宮殿としたときです。その後第26代国王である高宗(コジョン)が慶運宮に来てからまた法宮として使用されました。高宗が王位から退き、朝鮮の最後の王である純宗(スンジョン)が即位した際、慶運宮から徳寿宮へと名称が変わりました。

 

 

静観軒(チョングァンホン)は韓国式と西洋式を折衷して設計された建築物で、「静かに世界を眺める空間」という意味が込められています。国力の弱まりを懸念し、悩んでいた高宗の姿が目に浮かぶようです。

 

 

石造殿(ソクチョジョン)は朝鮮時代末期の代表的な西洋式建築で、1910年に完成しました。地下1階と地上2階で構成されており、地下は侍従の空間、1階は皇室の公的な空間、2階は皇室の家族の生活空間となっていました。現在石造殿の地下は自由に観覧できますが、1階・2階はインターネットで予約して解説士と一緒に観覧しなければなりません。徳寿宮は憩いの場として人気があり、4大宮の中でもっとも多くの人で賑わっています。

☞ 周辺観光地:国立現代美術館(徳寿宮館)
住所:ソウル特別市 中区 世宗大路 99
運営時間:9:00~21:00(月曜日休業)
入場料:大人1,000ウォン(韓服着用の方および毎月最終水曜日は入場料無料)
アクセス:1・2号線「市庁(シチョン)駅」1番出口より約100m
ホームページ:http://www.deoksugung.go.kr/ (韓・英)

 

 

朝鮮王朝の正統性の象徴、宗廟(チョンミョ)

宗廟は儒学を統治基盤として建国された朝鮮王朝の歴代の王と王妃の位牌を祀り、祭祀を執り行うための場所です。ソウルの4大宮殿に比べて単調に見えますが、これは神聖な雰囲気にするための意図的な設計です。宗廟は韓国の伝統的な価値観や歴史的、芸術的価値が認められ、1995年にユネスコ世界遺産に登録されました。

 

宗廟に入ると石でできた道が3列に長く伸びているのが見えます。この道は「三道」といい、神や王、世子が通った道です。3列の中で一番高く盛り上がっている道は亡くなった王や王妃の霊魂が通る道で「神路」といい、王であってもこの道を通ることはできませんでした。この道の右側は王、左側は世子が通った道で、この三道に沿って行くと宗廟の象徴である正殿の入口に到着します。宗廟に訪れたときは、文化財を尊重し、神路は踏まないようにしましょう。

正殿は横幅が101mで、韓国でもっとも長い木造建物です。正殿には朝鮮王朝を建てた太祖(テジョ)を始め、19人の王と30人の王妃の位牌が祀られています。朝鮮王朝の王は全員で27人ですが、業績や徳が高い19人の王とその王妃のみ正殿に祀られています。

 

 

 正殿に位牌を祀る空間が足りなくなり、正殿の隣に新しく建てられた建物が永寧殿(ヨンニョンジョン)です。永寧殿は正殿と似ていますが、よく見ると屋根の形が異なっており、規模が小さく、安置されている位牌数も34柱と多くありません。主に永寧殿には大きな業績を残せなかったり、在位期間が短かった王の位牌が祀られています。

現在でも宗廟では祭祀を執り行う宗廟大祭が行われています。毎年5月の第1日曜日に宗廟大祭が行われ、このときに演奏される音楽と踊りを宗廟祭礼楽といいます。宗廟祭礼楽もやはり2001年にユネスコ人類無形文化遺産に登録されました。

宗廟は毎週土曜日および毎月最終水曜日にだけ自由観覧が可能です。これ以外の日は文化財解説士と一緒に観覧しなければならず、時間ごとに韓国語、英語、日本語、中国語で解説されます。

☞ 関連ページ:ユネスコ世界文化遺産「宗廟」、ユネスコ人類無形文化遺産「宗廟祭礼および宗廟祭礼楽」
住所:ソウル特別市 鍾路区 鍾路 157
運営時間:
文化財解説士の案内時間に合わせて入場し、観覧(火曜日休業)
韓国語:9:20、10:20、11:20、12:20、13:20、14:20、15:20、16:20(17:00(3月~9月)、17:20(6月~8月))
英語:10:00、12:00、14:00、16:00
日本語:9:00、9:40、10:40、11:40、12:40、13:40、14:40、15:40(16:40(3月~9月))
中国語:11:00、13:00、15:00
※毎週土曜日および毎月最終水曜日は解説士なしで自由観覧
自由観覧日運営時間:2月~5月、9月・10月は9:00~18:00/6月~8月は9:00~18:30/ 11月~1月は9:00~17:30
入場料:大人1,000ウォン(韓服着用の方および毎月最終水曜日は入場料無料)
アクセス:ソウル地下鉄1・3・5号線「鍾路3街(チョンノサムガ)駅」11番出口より約200m
 

 

☞ 4大宮および宗廟をもっと楽しむ方法

4大宮および宗廟統合観覧券

 

景福宮、昌徳宮(後苑を含む)、昌慶宮、徳寿宮の4大宮と宗廟が割安で観覧できるチケットで、各宮殿や宗廟の入場券販売窓口で購入できます。統合観覧券は大人10,000ウォンで、購入日から3ヶ月間有効です。統合観覧券には昌徳宮の後苑の料金も含まれていますが、後苑を観覧するにはインターネットで予約をするか、現地に行って直接予約をする必要があります。

文化財解説士とともに観覧
ソウル4大宮と宗廟では文化財解説士が同行し、殿閣について分かりやすく説明してくれるプログラムが実施されています。専門家の解説を聞きながらじっくり観覧するなら、このプログラムがおすすめです。解説の料金は無料で、韓国語、英語、日本語、中国語で解説が可能です。宮殿別、言語別に解説時間が異なるため、前もって確認後、希望する時間に合わせて観覧しましょう。
※昌徳宮の後苑および宗廟は解説士と一緒にめぐる観覧のみ可能

夜間特別観覧
景福宮、昌徳宮、昌慶宮は毎年何度か夜間特別観覧が行われています(昌徳宮月明かり紀行とは別に実施)。夜間特別観覧期間中は夜10時まで運営され、外国人の場合は現地申し込みで入場できます。毎年夜間特別観覧の期間が異なるため、観覧の際は期間をまず確認してください。

More Info
文化財庁ホームページ:http://jpn.cha.go.kr/(日本語)
韓国観光案内電話:+82-2-1330(日本語)
※今後変更されることがありますのでお出かけ前に必ずご確認ください。

*source : KTO(Korea Tourism Organization) www.visitkorea.or.kr